屋根は、雨漏り防止のためのメンテナンスが不可欠です。
屋根塗装は、屋根のメンテナンスで非常に重要です。
しかし、屋根塗装に使用する塗料だけでも成分や色によって何種類もあり、どれを選べば良いか迷う人も多いことでしょう。
そこで、屋根塗装はどれくらいの頻度で行い、どんな塗料が良いかについて解説します。
屋根塗装の耐久年数
まずは屋根塗装の耐用年数について取り上げてみましょう。
屋根塗装の寿命はどのぐらい?外壁塗料との違い
屋根塗装の寿命は、使用する塗料のグレードによっても異なります。
住宅の屋根用途の塗料では、概ね10~15年程度が一般的です。
さて、屋根塗料と外壁塗料の違いの最も大きな違いは「対候性」です。
屋根や外壁は、どちらも屋外で雨風に晒されている環境ですが、直射日光や雨をダイレクトに受けているのは屋根です。
そのため、屋根の方がより「対候性」を要求され、対応力が高い塗料が使われています。
屋根塗装、塗料別の耐用年数と塗料の特長
次に、屋根の塗料別の特徴などを挙げてみましょう。
◆アクリル系塗料
アクリル系塗料はコストが安いのが特徴です。
しかし、その分耐用年数が短く、5年程度で塗り替えなければなりません。
住宅の屋根用途としては使われなくなっています。
屋根や外壁の塗装のコストパフォーマンスを確認したい場合には、塗料のコストだけでは無く、耐用年数についても考えなければなりません。
耐用年数が短い場合には、頻繁に塗装工事をしなければならず、工事のコストが重なってしまうからです。
◆ウレタン系塗料
ウレタン塗料は耐用年数がアクリル系塗料よりも長めで7年くらいです。
塗料の値段が安いのも魅力的と言えます。
しかし、ウレタン系の塗料も耐用年数は長くありません。
ですから、塗装のトータルコストを考えた場合には、逆に高くなってしまいます。
◆シリコン系塗料
シリコン系塗料は住宅用の塗料として最も良く使われている塗料の1つです。
以前はコストの高さから敬遠されていたのですが、今では価格も抑えられ、広く普及しています。
耐用年数は10年程度です。
◆ピュアアクリル系塗料
ピュアアクリル系塗料は最近注目されています。
オーストラリアの塗料メーカーが開発した新しいタイプの塗料です。
昔のアクリル系塗料との違いは「純度」で、ピュアアクリル塗料は不純物を徹底的に取り除いて作られています。耐用年数は15年程度を見込めますので、昔のアクリル系塗料とは完全に格が違うと言えるでしょう。
◆フッ素系塗料
フッ素系塗料は耐用年数が15年以上と長く、しかも汚れが着きにくい高性能な塗装です。
しかし、価格的には高すぎるため、あまり住宅用には使われません。
用途としては、住宅よりもビルの高層部分など、メンテナンス工事が困難な部分に使われます。
◆ラジカル系塗料
ラジカル系塗料は耐用年数が12年程度です。
ただし、ラジカル系塗料は他の塗料とは違ってチョーキングが起こりにくい、光沢が持続しやすいなどの性能があります。
一般に塗膜は、日光などが当たるとラジカルと呼ばれる因子が発生するため、表面から破壊されてしまいます。
しかし、ラジカル系塗料はラジカルの発生を抑える効果があり破壊を抑えるので、耐用年数が比較的延びる傾向です。
◆無機塗料
無機塗料は耐用年数が20年を超える高性能の塗料です。
と言うのも、一般の塗料と使われている材料そのものが異なるからです。
多くの塗料に使われている有機質は、紫外線や温度変化によってダメージを受けてしまいます。
しかし、無機塗料は無機質がベースの物。樹脂の様な物性よりも、石や砂の方が近いと言えます。
そのため、日射などによっても劣化のスピードは遅いのです。
ただし、無機塗料は耐用年数が長いだけあってコストも高くなってしまう欠点があります。
◆遮熱・断熱塗料
遮熱塗料と断熱塗料は住宅の温度環境維持に役立つ塗料です。
屋根部分での熱交換を抑えることが可能です。
ただし、遮熱塗料と断熱塗料は似ているようでいて異なる性質です。
検討に当たっては注意が必要です。
と言うのも、遮熱塗料は屋根に当たる日射からの熱を防ぎますが、室内から逃げる熱に対してはそれほど効果が無いからです。
これは顔料が赤外線反射の性能によるからです。
熱が逃げる効果は、あまり期待できません。
その一方で、断熱塗料はパウダー状の中空ビーズを混合しているので断熱材で包むイメージになります。
その結果、室内から熱が逃げるのも抑えられ、室内の温度環境を維持することができます。
◆光触媒塗料
光触媒は塗装そのものが汚れを分解する性能を持ちます。
きれいな状態を長く保てるのが特徴です。
これは二酸化チタンによる効果で、日光によって汚れの元となる有機物を分解するからです。
耐用年数は20年クラスとなるので、高性能の部類に属するでしょう。
屋根素材も耐用年数を左右する
屋根の耐用年数は塗料によって大きく左右されますが、それだけでなく屋根素材によっても決まります。
住宅に使われる代表的屋根の、素材別耐用年数をご説明します。
◆セメント系の耐用年数
セメント系の屋根にはスレートの物、そしてセメント瓦があります。
スレートは25~30年程度、セメント瓦は20年程度の耐用年数が見込まれます。
住宅用途としては、現在スレートがポピュラーで、セメント瓦は今ではあまり見られません。
◆金属系の耐用年数
金属系の屋根材はトタンやガルバリウム鋼板が代表的です。
これは鋼板にメッキを掛けた屋根なのですが、メッキの種類を変えた屋根材です。
耐用年数としては、トタンが15年程度、ガルバリウム鋼板が30年程度を見込めます。
最近ではSGL(エスジーエル)鋼板での屋根材が登場しました。
これも特殊なメッキを掛けていますが、耐用年数が飛躍的にアップし、40年以上の使用が可能です。
◆陶器系の耐用年数
陶器系の瓦は日本の家屋で伝統的に使われています。
耐用年数は非常に長く、50年以上使える素材もあります。
ただし、メンテナンスが大変なことと重量があることにより、今ではあまり使われません。
屋根が重くなると住宅の耐震性は落ちてしまいます。
陶器系は重量があるので、使用している住宅は耐震性の点で注意が必要です。
屋根塗装の耐久年数が切れた!放っておくとどうなるの?
屋根には耐用年数がありますが、仮に耐用年数を超えて使い続けていると、どの様な不具合が発生するのでしょうか。
1.見栄えが悪くなる、屋根塗装の主な劣化現象
金属部分のさびや腐食
屋根は雨が当たる部分。
放置するならば、さびや腐食が発生します。
さびや腐食が目立つとボロボロに見えてしまい、不格好です。
塗膜のひび割れ・剥がれ・反り・膨れ上がり
特にトタンなどの場合には、塗膜のひび割れや剥がれ、反り、膨れ上がりが発生します。
これも腐食が原因で、見栄えは悪くなります。
色あせ・変色・退色
塗装部分が劣化すると変色してしまいます。
家全体がボロボロに見えてしまうことでしょう。
また、塗装の劣化は他の老朽化の現象の起因にもなりますので、予防が大切です。
撥水性の低下
塗膜は水をはじく性質があります。
しかし、劣化してしまうと、その性能が落ちてしまいます。
こうなると老朽化が進みやすくなり、見栄えが悪くなってしまうのです。
チョーキング現象(白い粉がつく)
塗装を放置し過ぎるとチョーキングと呼ばれる現象が発生します。
手で触ると白い粉が着く、あの現象です。
これは塗装表面が破壊されたことによって起きています。
放置しておくと、どんどん老朽化が進みやすくなり、見栄えも悪くなります。
コケや藻、カビの発生
屋根にコケや藻、そしてカビが生えることさえあります。
これは撥水性が失われた状態で放置し過ぎた結果です。
見栄えは非常に悪いだけでなく、湿気による住居劣化が進みます。
2.屋根素材別の劣化・破損現象
屋根素材によっても劣化や破損は違います。
◆陶器瓦(粘土瓦)屋根
陶器瓦(粘土瓦)そのものは非常に耐用年数が長いのですが、台風などや強風により瓦が動いてしまうことがあります。
そして、漆喰の部分が破損する場合もあります。
◆セメント瓦
セメント瓦は衝撃に強くありません。
仮に飛来物があると割れてしまうことがあります。
台風が来た時などが要注意です。
◆ハイブリッド瓦
ハイブリッド瓦は、形状は瓦ですが材質はスレートに近いです。
特徴は軽量なため、家の耐震性が異なります。
ただし、衝撃には強く無く、飛来物による破損があり得ます。
◆スレート(コロニアル・カラーベスト)
スレートが老朽化してしまうと、色あせなどだけでなく、コケやカビが生えたりします。
また、衝撃にそれほど強くないので、飛来物によって破損する場合があります。
◆トタン屋根
トタン屋根は、サビや腐食が主な劣化現象です。
腐食が進んでしまうと、穴が開いてしまうこともあります。
◆ガルバリウム鋼板
ガルバリウム鋼板はトタン屋根と同じくサビや腐食の問題があります。
ただ、先にも挙げた様にメッキの耐用年数が長いので、トタンよりも長期間の使用が可能です。
◆ステンレス
ステンレスも腐食してしまいます。
穴が開いてしまうリスクはゼロには出来ません。
また、ステンレスは別の金属と接していると腐食が早まることがあります。
特に鉄素材と接している部分には注意が必要です。
◆銅板屋根
銅板屋根は非常に長い使用に耐えます。
歴史的建造物の使用例を見てみると、100年単位での使用が可能になります。
ただし衝撃でキズが付くこともあるので、台風などによる飛来物によって破損することもあります。
◆アスファルトシングル
アスファルトシングルはデザインに優れるのですが、剥がれが発生しやすいのが難点です。
また、苔なども発生しやすいデメリットがあります。
3.雨漏りなど、別のトラブル発生
屋根材の老朽化を放置し続けると、屋根の止水性能が劣化してしまいます。
屋根の止水性は、屋根材の下に敷いているアスファルトルーフィングなどで確保されていますが、水が中に入り込むことは良くありません。
やはり、老朽化を招いてしまうのです。
さて、仮に屋根からの水の侵入を許してしまうと、雨漏りが発生します。
しかし、発生するのは雨漏りだけではありません。
と言うのも、屋根裏の部材の腐食に繋がるのです。
そそうすると天井を支えきれなくなり、天井が剥がれたり、落下したりもし得るのです。
尚、屋根は日射や風雨、そして気温の変化くらいの要因が環境的悪条件と思われるかも知れませんが、実際には風による吹き上げ、積雪による重み、排気ガスなどの影響もあります。
悪条件が複合的に加わり、ダメージが増大するのです。
4.塗り替え以外のリフォームが必要になる
屋根は軽微な老朽化であれば、再塗装によって性能を復活させることが可能です。
しかし、放置し過ぎると塗装ケアだけでは済まなくなってきます。
つまりカバー工法による屋根の補修や葺き替えが必要だったり、天井裏浸食があれば部材の補強なども行う必要がでてきます。
そうなると、工事に掛かる費用が膨れ上がってしまいます。
いずれにせよ、屋根は定期的なメンテナンスを行い、老朽化を放置しないことが重要となるでしょう。
屋根リフォームは、内容によっては自治体から資金援助を受けられる場合があります。
リフォームを検討する際には、最初の段階で市町村のHPなどで確認しておくのがベターです。